本文
藤巻 康一郎 (教授,医師) 精神薬理学,精神科リハビリテーション
精神疾患の早期発見や予防に関する研究を行っています。また,入院患者の早期退院?早期社会復帰に向けたリハビリテーションの個別適正化プログラムに関する研究を行っています。
(2024年度の取り組み)
2024年度には2名の大学生が所属しております。研究として,「まだ本格的なうつ病とまではいかないけれど,気分が落ち込みやすい状態」にある大学生を早く見つけて,うつ病にならないように早めにサポートする方法を研究しております。
この研究に中で,こうした軽いうつ状態を見分けるために,前頭皮質血流変化を調べることで,早めに見つけられる仕組みを作ろうとしています。
(過去の取り組み)
年度 |
研究テーマ |
2024 |
?閾値下抑うつ?社会交流技能?精神作業評価の臨床実習前後比較における一考察 ~遂行機能の視点から~ ?閾値下抑うつ?社会交流技能?精神作業評価の臨床実習前後比較における一考察 ~保続性の視点から~ |
2022 |
?大学生の性格特性と学習動機の関連性について
?対人場面における好きな感情または嫌いな感情と性格の関連性 |
2020 |
?慢性期統合失調症患者に対する認知機能改善療法の作業遂行への影響 ?慢性期統合失調症患者に対する認知機能改善療法の自己効力感への影響 |
これまでの研究の一つとして,情動面及びストレスと脳の活性化との関係を評価し,検討することを目的とした研究を行っております。情動面とストレスの評価を実施し,被験者は,タスクとして内田?クレペリン精神作業検査を行い, 32チャンネルの近赤外分光法(NIRS: near-infrared spectroscopy)を用いて,前頭皮質の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)におけるレスト時とタスク時の濃度変化を分析しました。結果として,前頭皮質右側の脳血流変化量と抑うつ?意欲低下?ストレスの評価数値結果の間で,相関性がみられました。以上より,NIRSによって測定される精神作業時の脳血流量の変化は,抑うつ?意欲低下?ストレスを評価する上で,生物学的補助評価指標になり得ることが示唆されております.
研究の結論
最近では,重い精神の病気を持つ人たちには,考える力や覚える力(=認知機能)が弱くなってしまうことがあると報告されております。特に統合失調症という病気では,多くの人にこうした認知機能の低下が見られます。
認知機能が下がると,仕事をしたり,毎日の生活を送ったりする中でいろいろな困難が生じ,それがストレスの原因になります。また,認知機能の低下は,病気が治った後の生活のしやすさにも大きく関係しています。
私たちは,統合失調症を抱える方が考える力などを少しでも取り戻すことで,ただ症状が良くなるだけでなく,自分を肯定できるようになるということを報告しております。
藤巻康一郎 作業科学研究 16(1) 30-40 2022年9月
藤巻康一郎教授の研究業績は,研究者紹介(藤巻康一郎) を参照してください。